美術展「ポーラ美術館コレクション モネ、ルノワールからピカソまで」レポート③

アート

美術展レポート、パート3です。

1と2はそれぞれこちらのブログに書きました。

美術展「ポーラ美術館コレクション モネ、ルノワールからピカソまで」レポート① - CAPRICIOUS
岡山県立美術館にて開催されている美術展、「ポーラ美術館コレクション モネ、ルノワールからピカソまで」に行ってきました。 印象派の絵画を生で見るのははじめて。やはり本や画集でみるのと、目のまえで実物をみるのとでは、絵から受けとれる情報量が格段にちがいました。画家が本当にその絵に筆をいれたことがより現実的な感覚としてわかる...
美術展「ポーラ美術館コレクション モネ、ルノワールからピカソまで」レポート② - CAPRICIOUS
この美術展のレポート、書きはじめてみると思いのほか長くなりそうだったので、いくつかにわけることにしました。1つの記事が、あんまり長ったらしいと読みづらいですし。 さて、印象派というのは、美術の歴史のなかでも当時はかなり異端とされていました。その印象派も、皆がみんなおなじような絵を描いていたわけではありません。もちろん、...

 

こんなに書くつもりはなかったのですが、書きたいことを書き出していったら、結構なボリュームになってしまいました。

自分が行ったのは岡山県立美術館で、そちらの美術展はもう終わっています。が、内容が同じ美術展が現在、茨城県近代美術館にて開催されています。

 

関東圏にお住まいで、絵画や印象派に興味のある人はぜひ足を運んでみてください。

 

鑑賞者へのサプライズ

 

この美術展には、おもに「印象派」の絵を見ようと思って行きました。ところが、展示室の最初に飾られていたのは、「印象派」の絵画ではありませんでした。

 

そこにあったのは、エドゥアール・マネとギュスターヴ・クールベの絵画です。マネとクールベは、いわゆる印象派の画家ではありませんでした。しかし、その作風はのちの印象派となる画家たちに影響をあたえたといいます。

 

わたしたち鑑賞者も、その印象派の系譜を追体験できるような展示になっていた、というわけです。この“しかけ”のおかげで、すっかりこの美術展が気に入ってしまいました。

 

印象派前夜の巨匠、クールベ

 

クールベは写実主義の画家です。「写実主義」とは、ようは“見たものをそのまま描く”ということです。

 

このクールベという人は、とくに、写実主義を徹底していました。神話にしかでてこないような“天使”や“女神”。そういった非実在のもの、自分の目でじっさいに見ることができないものはけっして描かなかったそうです。

 

中世の絵画には、ものすごい細かく描きこまれた作品があります。逆に印象派の絵画は、粗く大胆な筆づかいで描かれている。マネやクールベの絵は、そのちょうどあいだくらいに位置しているように思えました。

 

つまり、クールベやマネの絵は写実的ではあるけれども、そのなかには印象派への“布石”を見ることができるということです。もちろん、印象派ほど個人の“印象”を前面に押し出してはいませんが。まだ写真がない時代の写実的な絵画と比べると、そこまで細かく描きこんではいないように思えたのです。

 

見たものをそのまま描いてはいる。でもそこまでくっきりとした引き締まった絵ではない。写真のように象がはっきりと写っているわけではない。写実的といっても、昔からのやり方をそのまま引き継いだわけではなかった、ということでしょう。

 

事前の勉強は完全ではない

 

この美術展を見に行こうと決めてから、1ヶ月くらいかけて美術の本を読み漁りました。印象派を中心に、読みやすくて簡単なやつを。それで自分ではある程度の知識を身に着けたつもりでした。が、いざ美術館に行ってみるとまったく足りませんでした。

 

付け焼き刃の知識をもって行くなら、むしろまっさらな状態で絵画と向き合ったほうが良かったのかもしれません。というのも、変に知識があると、頭のなかで記憶を掘り起こそうとしてしまうからです。

 

本物の絵画をまえにして、本の知識をあれやこれやと思い出すのはナンセンスだったのかも、といま振り返って思います。

ついつい「これは何が描かれているのだろう」とか、「どういう意図があるのだろう」とか考えようとしてしまいます。考えても全然わからないので、5分も10分も同じ絵のまえにいる。まあ、それはそれで楽しかったのですが。

 

絵画や美術は、一朝一夕には理解できない。それだけ奥が深いということですよね。

 

それでも見やすい印象派

 

初心者がちょっと本を読んだくらいでは完全理解にはおよばない「印象派」。それでも、伝統的な絵画に比べたらかなりわかりやすいのかもしれません。

 

印象派は“個人の印象”を描いているぶん、何が描かれているのかを判別するのにはすこし手間取ったりします。でもその絵に描かれているものは、わたしたちの身近なものが多いです。

 

庭の池だったり、近くの山だったり、橋や人や街並みといったものです。ですので、一見わかりづらい印象派のほうがじつは身近で親しみやすい、面があります。

 

じっさい、印象派より前の時代では絵画は富裕層のものでした。一般市民にはあまり馴染みのないものだったのです。それが印象派の誕生によって、状況が変わりました。庶民にもわかりやすい、家に飾ったりしやすい絵画。それにより、人気が広まっていったといいます。

 

反対に、伝統的な絵画を見るには、知識や教養といったものが求められます。予備知識がないと、絵を見てもちんぷんかんぷんでしょう。きちんと理解するためには、神話や宗教、歴史などの知識が必須なのです。だからハードルが高い。

 

もちろん、伝統的な絵画がダメといいたいのではありません。わかりやすさの問題です。

 

いまから「何か美術に触れたい」ということなら、“印象派”から入るのがおすすめです。印象派の絵画は、知識がなくても、目で見て楽しむことができます。それはある意味、絵画の一番の楽しみ方かもしれません。