「ピエール・ボナール展 オルセー美術館特別企画」感想レポート!

ピエール・ボナール展、パネル アート

先日、国立新美術館で開催されている「ピエール・ボナール展」に行ってきました。

オルセー美術館特別企画 ピエール・ボナール展|国立新美術館 2018年9月26日(水)〜12月17日(月)
オルセー美術館のボナール・コレクションが一挙来日。約30点は初来日!

 

タイミングは、平日(水曜日)の会館直後(午前10時)からです。

平日なので、お年寄りが多めでしたが、老若男女、若い人もちらほらいましたね。

 

ピエール・ボナールは、19世紀末から20世紀のはじめに活躍したフランスの画家です。

 

活躍したといっても、一般の知名度はそこまで高くないかもしれませんね。

ゴッホやピカソにくらべると、ボナールの名前はそこまで知られていない印象です。

 

ボナールは、まわりから「日本かぶれのナビ」といわれたほど、日本美術に傾倒していました。今回の美術展は、その傾倒っぷりがよくわかるものでした。

 

アヴァンギャルドではなく、印象派やピカソ、古典的な絵画ともちがう、独特の世界がボナールの絵にはあります。

 

そしてそれは、日本人の感性とも近いものがあると実際に展覧会を見て思いました。

 

「印象派とかピカソとか、フランスの絵画は好きだけど、ボナールは大したことなさそう」

などと思っている人は、ぜひこの美術展に足をはこんでボナールの絵画を刮目してほしいです。

 

日本美術が海外画家の手でどういう風に進化したのか

が見られますよ。

 

というわけで、「ボナール展」をレポートしつつ、その絵画の魅力を紹介していきます。

 

あ、美術展に行く前に簡単な本を読んでおくと、気づきが増えてより楽しめますよ。

 

ピエール・ボナールの絵画は、部屋に飾りたくなる絵画

 

《叫び》で有名なエドゥアルド・ムンクの絵画は、

部屋に飾っておきたくない絵だ」とよくいわれます。

たしかに、見ているだけで不安になる絵ですね。

 

ムンクが飾りたくならない絵なら、

ピエール・ボナールの絵画は、“部屋に飾りたくなる絵”でした。

 

どの絵も色鮮やかで、

構図がうまくて

ずっと見ていたくなるような絵だったんですね。

 

ボナールの絵の特徴としては、

「平面」

「色彩」

「装飾性」

があります。

 

こうした特徴のおかげで、ボナールの絵は、部屋に飾っておきたくなるというわけです。

 

といっても、単語だけではわかりにくいと思うので、もう少し説明しましょう。

 

「平面」の反対は、「立体」

 

「平面性」については、日本人は浮世絵として慣れ親しんでいます。

 

「いや、浮世絵なんか知らないよ」

という声が聞こえてきそうですが。

 

部屋に飾ってはいないにしても、

たとえば葛飾北斎《富嶽三十六景》は、日本人ならが一回くらいは見たことがあるはずです。

 

葛飾北斎、富嶽三十六景、神奈川沖浪裏

 

雄大で、どこか落ち着いたたたずまいのある絵を見ると安心します。

 

そんな安心感がボナールの絵にもありました。

 

平面だから装飾性がある

 

「平面性」が、同時に「装飾性」も高めています。

 

「装飾性」とは、飾って美しいということです。

人や自然を描いていても、細かすぎずいい感じに簡略化されて平坦になっています。

 

だから、純粋に“飾り”として見ることができるのです。

 

見ているだけで美しい「色彩」

 

「色彩」については、ボナール展のパンフレットを見るだけでわかります。

「ピエール・ボナール展」のパンフレット

「ピエール・ボナール展」のパンフレットより

 

色と色の組み合わせ”がいいんです。

 

絵のタッチがぼやっとしているせいで、テキトーに塗っているようにも見えてしまいますが、たぶんしっかりと考え抜いた上で、色の配置を決めています。

 

だから、全体が調和のとれた、おさまりのいい絵になっているのだと思います。

 

空間に溶け出すような、ボナールの絵画

 

美術館では、展示スペースがとてもゆったりと取られています。

すごく広い壁に、一枚の絵だけが掛けられていたりします。

 

空間に溶け出しているような、空間と一体化しているような、そんな感じがしました。とても自然にそこに絵があるんですよね。

 

主張が激しすぎず、かといって印象が薄いわけでもない。

 

美術展の見どころ:「日本かぶれのナビ」

 

この美術展の最初のセクションは、「日本かぶれのナビ」です。

ボナールの絵画の中でも、有名でよく見るが集められていました。

たとえば、

《庭の女性たち》

《黄昏(クロッケーの試合)》

《格子柄のブラウス》

《白い猫》

《男と女》

などです。

 

ボナールは、当時フランスで開催された展覧会で日本美術を見て、とても気に入ったそうです。そして、自分の絵画にも日本美術の要素を取り入れた。

 

それを見た人が、ボナールとボナールの絵画を「日本かぶれ」を呼んだんですね。

これは悪口ではなく、いい意味でそういわれたのだと思います。

 

当時のフランスでは、日本美術は人気があったそうですから。

 

《庭の女性たち》は4枚の絵で1セットの作品です。

《庭の女性たち》

《庭の女性たち》、パンフレットより

日本美術の、浮世絵の影響といえば、この絵画が一番わかりやすかったです。

 

まず、4枚の絵は縦長になっています。それが横にならんで一つの作品になっているんですね。

 

西洋の絵画で縦長の絵というのは、ほとんど見かけません。よっぽど日本の掛け軸に見せられたのでしょう。

 

掛け軸

掛け軸 – Wikipedia

 

 

《庭の女性たち》の4枚の絵のなかでもとくに、左から2つ目の「猫と座る女性」なんかは、素人目にも浮世絵の影響がよくわかりました。

 

背景がベージュっぽい色が浮世絵と同じ

草が簡略化されて、版画のようになっている

立体感がない平坦な女性の体

全体的に平面で遠近感がない

 

などです。

 

生で見ると、この絵に描かれている4人の女性たちは、ほとんど等身大でした

 

デジタルより圧倒的に情報量が多い、アナログ

 

絵画は本にのっている写真で見るのと、実際に生で見るのとでは、だいぶ印象が変わります。

このことに気づいたのは、《格子柄のブラウス》《白い猫》を見たときでした。

《格子柄のブラウス》

《格子柄のブラウス》

 

この二つの絵は、ボナールの作品の中でも有名な方です。

 

《白い猫》は、この展覧会のチケットの絵にもつかわれています。

《白い猫》

《白い猫》、美術展チケットより

 

《格子柄のブラウス》は、「オルセーのナビ派展」のパンフレットに大きくのっていました。さらに、この絵はボナールの、日本美術から影響された「装飾性」のわかりやすい例としてよくあげられています。

 

そんなわけで、この2枚の絵はわりとよく見ていました。

 

ところが、美術館で実際に絵の前に立つと印象がまったくちがったのです。

 

本やパンフレットにのっている絵画は、おそらくほとんどがカメラで撮った写真です。

 

いまのカメラはかなり性能がいいはずですが、それでも生で、人間の目で見ることには敵わないのだと強く感じました。

絵画がスポットライトを浴びて発色している色がそのまま目に飛び込んできて網膜に映し出されている感覚というのでしょうか。

 

そもそも写真で見ている時は、「絵画」をそんなにちゃんと見ていないんだ、ということにも気づきました。

 

「あれ、この絵って結構荒っぽいタッチで描かれていたんだな」

などと、実際に見てはじめて気づくこともあるのです。

 

画家が描いた絵の息づかいをぜひ美術館で感じとってみてください。

べつにむずかしいことではありません。わたしみたいな素人でもわかるくらいです。

 

絵画はとてつもないパワーをもっているので、向こうから勝手に語りかけてくれます。

 

ボナールの「裸婦画」がいい

 

ボナールの裸婦画はとても魅力的でした。

ほかの画家が描く裸婦画とはだいぶちがいます。

 

何がちがうのかというと、モデルになっている女性がこっちを向いていないことです。

 

裸婦画のモデルは、たいてい画家のほうを向いて、さらにそれっぽいポーズをとるものです。

 

エドゥアール・マネ、《オランピア》

エドゥアール・マネ、《オランピア》

こんなふうに。

 

でもボナールの裸婦画はそうじゃないんです。

 

どうしてそうじゃないかというと、ボナールは、

モデルにポーズを取らせるよりも、日常的な動作に没頭させた

からだそうです。

 

この言葉どおり、絵画のなかの裸婦は、

 

背中を向けていたり、

 

お風呂に入っていたり、

《浴槽》

《浴槽》

 

そもそも顔がうつっていなかったり、

《化粧台》

《化粧台》

します。

 

モデルの女性は好き勝手にしていて、それをボナールが勝手に絵に描いているかのようです。

 

でもそれが逆に、

裸婦画という伝統的なモチーフをマンネリ化させずに斬新さすら感じさせてくれます。

 

モデルの裸婦は、自分のことに集中しているんですね。

モデルをしているという意識がまったくない。

「描きたいなら勝手にどうぞ?」

といった感じです。

 

その素っ気なさがかえって魅力的です。

本当に“素のまま”の女性が、そこにはいるからです。

 

裸婦画は、「近代の水の精(ナイアス)たち」というセクションに集められています。

 

印象に残っている絵画3枚

 

個人的に印象に残った絵を簡単に紹介します。

次の4つです。

《黄昏(クロッケーの試合)》

《格子柄のブラウス》

《男と女》

《化粧室 あるいは バラ色の化粧室》

 

《黄昏(クロッケーの試合)》

《黄昏(クロッケーの試合)》

《黄昏(クロッケーの試合)》

 

この絵は実物を見ると結構大きかったです。

展示室の真ん中あたりに大きな壁があって、そこにこの絵が1枚だけ飾られていました。

 

ちょっとずつちがう“緑色”がつかわれていて、とても綺麗でしたね。

 

写真で見たときは、

「変な構図だなあ」

とか

「収まりが悪いなあ」

と思っていました。

 

だけど、実際に見ると違和感がなくて、むしろきれいな画面に見えて不思議でした。

 

《格子柄のブラウス》

《格子柄のブラウス》

《格子柄のブラウス》

 

この絵は、ボナールの作品の中ではよく見かけますね。

代表作です。

 

サイズが結構小さいんです、じつは。

そのことにまず驚きました。

 

そして、タイトルにもなっている「格子柄のブラウス」

このブラウスの赤と白がとても綺麗に発色しています。

 

実際は、この画像よりもっと鮮やかな赤と白です。

 

よく見ると、服の下にあるはずの体の膨らみとかがほとんどわかりません。

平坦だからですね。チェック柄の布をそのまま貼り付けたかのようです。

 

これがこの絵の装飾性を高めているんですね。

まさに、部屋に飾りたくなる一枚です。

 

《男と女》

《男と女》

《男と女》

 

情事の終わり、といった感じの絵です。

 

うつっているのは、ボナール本人とマルト。

マルトは、ボナールの裸婦画に一番登場する女性です。

 

絵画は近くで見るといろいろ新しい発見があります。

画像で見ているだけではわからなかった、筆毛の一本一本のあとまでわかったりします。

 

この絵を見ていて気づいたことは、左にいる女性のポーズです。

 

この女性は、右の乳房だけ上にずれています。

よく見ると右手を後ろについているんです。なので、それに連動して右肩と右胸が少しあがっているように、描かれているんですね。

 

え?そんなこといわれなくてもわかる?

そうですか……

 

《化粧室 あるいは バラ色の化粧室》

 

この絵は、個人的飾っておきたいボナール絵画ナンバーワンでした。

 

全裸のモデルが描かれていますが、エロティックさはそれほどありません。

 

画面構成も変わっています。

裸婦画というよりも、

身支度をしている妻を後ろから写真で撮った

みたいな絵になっています。

 

モデルの女性も画面の端にいますし。

さらに、画面の左半分は壁があるせいで窮屈に感じるのに、右半分は鏡になっているため奥行きがある不思議な絵です。

 

全体的にやわらかい色がつかわれているのもいいです。

 

まとめ:色彩豊かで見ているだけで楽しめるボナール展

 

美術館に行くたびに思うことは、

「絵画を生で見るのは楽しいなあ」

ということです。

 

デジタルがこれだけ進んでいても、

生で得られる情報量はやっぱり格段に多い

です。

 

絵画を見るのは、原始的な行為かもしれません。

 

でも、アートを見ると脳が刺激されます。

快感をおぼえます。

ようは気持ちいいんですね。

 

なぜかはよくわかりませんが。

 

ともあれ、絵画は目だけで見るというより、体全体で感じとるものです。

べつに意識しなくても、絵のほうからオーラのようなものが放たれてきます。

 

その、時代を超えた波動を体感するのが、美術館に行くことの醍醐味だと思います。

 

・ピエール・ボナール展 公式サイト

オルセー美術館特別企画 ピエール・ボナール展|国立新美術館 2018年9月26日(水)〜12月17日(月)
オルセー美術館のボナール・コレクションが一挙来日。約30点は初来日!

 

・国立新美術館 公式サイト

オルセー美術館特別企画 ピエール・ボナール展|企画展|展覧会|国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO