【小説】苦悩する人の心が美しい。金原ひとみ『持たざる者』【感想】

女の人、孤独、苦悩 本・書評

金原ひとみさんの小説『持たざる者』を読みました。

 

 

最近金原さんの作品にハマっています。

前回読んだ『軽薄』も面白かったし、この『持たざる者』もよかった。

 

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女性だから描ける女性の内面

 

今まで小説を読むのに、作者が女性か男性かを気にしたことはほとんどありませんでした。

最近になって意識し始めたのです。

 

それで気づいたことで、女性(作家)の描く女性って、面白いんですね。

現実的なところもあるし、すごく感情的な部分もあって、描かれる女性はとても生々しいんです。それがすごく面白い。

 

金原ひとみ作品は、女性の生き方とか内面に焦点があたっています。ファンタジーでなく、ミステリーでもない。どこまでも現実的な女性像が描かれているんですね。

 

小説に登場する女性が、また素敵なんです。素敵というのは、かわいいとか格好いいとかではなく。苦悩している姿が素敵なんです。

 

大切な何かを失くした人たち

 

タイトルの「持たざる者」。

この小説には、何か自分の大切なものを失くしてしまった4人の男女が出てきます。

 

4人のそれぞれの視点から、

失くしたものとどう向き合うのか、どう折り合いをつけるのか

といったことが描かれます。

 

こう聞くとなんだかとても暗い話のようです。が、むしろ逆で読んでいると希望を感じました。

 

それはなぜかというと、登場人物たちが皆、絶望に抗っているからなんですね。

 

悲しんだり、自分に無力感をもったりしながらも、考えることをやめていない。

そのギリギリのところで人生をあきらめていない姿が、読んでいる人の心を揺さぶってくるのです。

 

苦しみを受け入れて、前に進む

 

生きていれば何か問題の一つや二つは起こるもの。そのときにささっと解決できる人と、そう簡単にはいかない人がいますよね。

 

その悩みながらそれでも前に進もうとしている姿がとてもいい。

登場人物が苦悩している姿に読者のこっちまで胸が痛くなります。

 

でもそのうち、その姿に悲しみではなく勇気を感じられるようになる。

 

金原ひとみ作品は、会話よりもモノローグのほうが多い印象です。

それはたぶん、登場人物たちの内面をよりしっかりと描写するためだと思いました。

 

異なるタイプの女性(そして男性も)を書き分けられるのがすごいですね。

物語に動かされる人形、という感じがまったくしない。

 

一人ひとりが意志をもってちゃんと歩いている感じです。だからどの登場人物にも魅力的な部分を感じられるんですね。