『本を遊ぶ 働くほど負ける時代の読書術』書評

本・書評

「本にかけるお金だけはケチるな」と何人もの人がいっています。わたしが聞いた(読んだ)その人たちはみな、本を書いて出版していたから、少しは割り引いて受けとる必要があるかもしれません。それでも、本の効用は無視できないものであると、なんとく、直感でわかります。

 

本に使う金は惜しむな、という人はいても、本なんかにお金は使うな、といっている人はあまり見かけません。というか見たことがない。これはすこし不思議です。ひとつの主張があったら、まったく逆の意見があってもよさそうなのに。

 

本を買うことは、有無をいわさず圧倒的にいいこと、ということなのでしょうか。

本書『本で遊ぶ』も、本にはお金を惜しまないこと、をすすめている本のひとつです。

 

本を読むとなぜいいか

 

たとえば、本を読めば、前提や常識にとらわれずに物事を考える力がつく。これからの時代はそれまで常識とされていたことがどんどん通用しなくなっていく、といいます。だから常識を疑い、“ゼロベース”で物事を考えなくてはならない。そのために必要なのが読書というわけです。

 

本には絶対的な正解が書いてあるわけではありません。ある本と、またべつの本では、まったく逆のことが書いてあったりします。同じ分野のちがう本を読むと、いろんな意見を知ることができます。そして、その中から自分に合ったものを選びとることができる。

 

本を読むと、世の中にはさまざまな考えや方法があることを知ります。常識に従う必要はまったくありません。常識にしばられないようにするため、自由になるために、読書をするのです。

 

本に「役に立つ」ことを求めすぎない

 

なぜかといえば、どの本のどんな考えが自分の役に立つのかなんてことは、本当のところわからないからです。人生は、学校のテストみたいに問題と解答がセットになっているわけではない。どの知識がどんな場面で力を発揮するかはあらかじめ知りようもないからです。

 

それだったら、本を読んで「空想力」を養ったほうがいい。

 

金持ちになる人とは、いかに金を稼ぐかを考えている人ではありません。自身の空想力で、金持ちになったときの自分のイメージを鮮明に描いている人です。もう頭の中の自分は金持ちであって、あとは現実の自分とのギャップを埋めているだけなのです。

 

「もし自分が億万長者になったら」なんていう妄想は、いやしいものだと思ってしまいます。しかしながら、ビジネスでもスポーツでも、成功している人というのは、常に自分の頭のなかで理想の自分を思い描いている人なのです。

 

どうせ妄想するなら、とことんなりたい自分を考えて、細かいところまで具体的に想像する。そしてその理想に向かって突き進む。この「空想力」とか「想像力」を鍛えるのにうってつけなのが、本を読むことなのです。

 

漫画やライトノベルを除けば、ほとんどの本は、文字だけで埋めつくされています。それを読んでいるとき、とくに小説を読むときは、頭の中に視覚的なイメージが浮かんでいるはずです。意識しなくても、イメージしようとしなくても勝手に絵がわいてくるでしょう。

 

この、文字を絵に変換するのが「想像する」ということです。少ない情報からより情報量の多い具体的なビジョンへ。データでは、文字だけのテキストより、絵や写真のほうが容量は大きくなります。それだけ情報量が多いからです。

 

コンピュータは情報量が多いものをけずって圧縮して小さくすることは得意です。が、情報量が小さいものを大きいものへと変換することは苦手なはずです。小説の原稿をコミカライズ(漫画化)する、あるいはアニメ化するといったことは、まさに想像力をフルパワーで発揮しないとできないことです。人間はそれをやっています。

 

漫画やアニメをつくらないまでも、簡単な空想や妄想ならみんなが日常的にやっているのではないでしょうか。その妄想をつまらないものだと切り捨てない。逆にとことん突き詰めてみる。

どんなことをしたいのか。どんなところへ行きたいのか。どんな人と付き合いたいのか。

 

そうすると仕事や遊びが楽しくなります。

 

『本を遊ぶ 働くほど負ける時代の読書術』小飼弾 朝日文庫