【小説】誰かを思う狂おしいほどの気持ちを赤裸々に描き出す。川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』【感想】

すべて真夜中の恋人たち、川上未映子 本・書評

相変わらず恋愛小説にハマって読んでいます。

今回読んだのは、川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』です。

 

 

今までは「なんでフィクションでまで恋愛?」とか「恋愛くだらねー」とか考えていたんですが。もはやなんでそんなひねくれていたのかも思い出せないくらい恋愛ものにハマってしまいました。

 

小説とか漫画を読んでいてどういうときに感動するかというと、主人公とかヒロインが感動しているときなんですよね。

 

物語のなかで、主人公とかが悩んだり苦しんだりもがいたり。そういう周りから見たら無様でかっこわるいと思うようなことをしている姿を見てつい感情移入してしまいます。

 

自分はただの読者なのに、主人公と一体になったかのように、同じ気持ちを味わえるんですよね。

 

そういう心の揺れ動きって、楽しいときより、悲しいときのほうが何倍も大きくて深い。

 

小説を読みながら、その悲しみの深みに主人公と一緒にずぶずぶと落ちていく感じがなんともいえない不思議な気持ちです。

 

悲しいのは確かだけど、でもべつに嫌じゃないというか。

 

心が動かされるのって、落ち着かなかったり不安な気持ちになったりします。

けど、その小説の世界にのめり込んだ、主人公と気持ちを同じにした経験って無駄じゃないと思うんですよね。

 

同じ恋愛について書いてあるものでも、

 

ただ事実だけを述べているノンフィクションと

登場人物たちの気持ちとか感情とかが描かれている小説

 

では面白さが違うんです。

 

恋愛って、人間がすることの中でもおそらく心の振れ幅が一番大きいですよね。

 

幸せの絶頂もあるし失意のどん底もある。たぶんどちらも恋愛によるものだと思うんです。少なくともフィクションにおいては。

 

その幸せと絶望の両極端にいる人間が描かれるから、恋愛小説って面白いんですよね。

 

幸せの絶頂はともかく、絶望のふちなんて、できれば自分では経験したくはありません。

でも小説なら、それを読むことで幸福と絶望を追体験できます。

 

だからフィクションは面白いんです。

 

『すべて真夜中の恋人たち』は、恋愛による感情の移り変わりがよく描かれている小説でした。

 

不器用で自分を表現することが苦手な主人公。

恋をして、愛を知り、いろんな感情を獲得しています。

 

結末がどんなだったとしても、その過程は無駄なんかじゃなく、自分を成長させるものだったと思える。

そういう小説です。