新感覚日常ミステリの第2弾!『夏期限定トロピカルパフェ事件』書評

本・書評

前作に引き続き、相変わらず話の展開が予測できないミステリでした。読者にとっては、こういうミステリを読んでいる間はとても楽しい時間です。ぐいぐいと物語に引き込まれていって、気づけば没入してしまっている。そういう意味では、ミステリというのはサスペンスの要素も含んでいるのかもしれません。

『夏期限定トロピカルパフェ事件』は、前作の『春期限定いちごタルト事件』の続編です。といっても、日常ミステリで短編集なので、特段ストーリー上のつながりはないですが。

 

前作『春期限定』は、わりとほのぼのしていました。ミステリなので、事件は起こりますが日常の域を出ない感じでしょうか。なので『夏期限定』もそんな感じかと思いながら読んでいきました。ところが、『夏期限定』では物語が急加速していきます。物語というか、主人公ふたりの関係性が、といったほうがいいかもしれません。

 

どういうことかというと、まず小山内さんが本性をあらわします。前作でも多少その片鱗は見せていました。おっとりしていて恥ずかしがり屋で可愛らしいだけの少女ではない、と。

 

事件の謎が解き明かされていくのと同時に、小山内さんの本性もあらわになっていく“仕掛け”が見どころです。

 

主人公のふたり、小鳩君と小山内さんは「互恵関係」にあるといいます。仲のいい友人ではないし、恋人でもない。ただお互いの利害が一致した場合にだけ、時間や行動をともにする。恋人などとは程遠い、ある意味冷めきった関係なのです。

 

このシリーズでは、ある意味その“いびつさ”が事件を解決する重要なカギになっています。けれどもいびつであるがゆえに、きしみをあげて壊れようとしている。今作の『夏期限定』では、そんな感じに見えました。

 

少し大げさすぎたかもしれません。登場する謎は、あくまで「小市民」に扱えるようなこぢんまりとしたもの。殺人なんて、もちろん出てきません。その壮大すぎないところ、こぢんまりとしているところが、まさしく「小市民」そのものです。

 

「日常ミステリ」とは、自由自在で変幻自在です。なぜかって、“型”がないからです。

『春期限定』の書評でも少し書きましたが、「何が謎になるのか」というところから謎なのです。

 

事件の始まり自体を予測できないのだから、その謎がどう転がっていくのかなんてことはまったく予想できないのです。だからこそ面白い。個人的に「日常ミステリ」というジャンルにはとても可能性を感じます。もっと広まってもいいのに、とすら思います。

 

殺人事件が起こって、警察も絡んでくるようなミステリが好きなんだ、という人もいるでしょう。

 

もちろんそれもいいですが、殺人だけが事件じゃあないのです。「事件」とは、どこにでもあって、誰に対しても起こるもの。そしてだれもが、被害者にも加害者にも、さらに探偵役にもなれる。そこが「日常ミステリ」の面白いところです。