ピカソが動いているところを見たくないですか?『ミステリアスピカソ 天才の秘密』映画感想

アート

パブロ・ピカソ。二十世紀最大の画家です。

ピカソの絵は、後期になるほどわけがわからなくなります。「絵画」なのか「落書き」なのか。素人にとって、その絵の“すごさ”を理解するのはむずかしいです。

 

正直、みんながすごいといっているから、「なんかすごいんだろうなあ」と納得する感じです。

 

ピカソの作品なら、最初のころの絵のほうがまだわかりやすいと思います。

ピカソははじめから、あんなへんてこな(失礼)絵を描いていたわけではありません。

 

見たものをそのまま描いたような絵もあるのです。それがキュビスムに傾倒しだしたあたりから、どんどん“高度”になっていきます。

 

絵画そのものは簡単になっています。わかりやすい線とわかりやすい塗り。

 

ですが、「そこになにが描かれているのか」「なにを表現しているのか」といったことは、さっぱりわかりません。少なくとも素人には。

 

そういう意味での“高度”になった、です。

 

この映画の見どころ

 

ピカソが絵を描いているところ

© 1956 Gaumont

 

・ピカソが動いてる!
・ピカソの絵がどうやって描かれているのか、その過程を見ることができる!

 

この2つです。

 

ピカソが動いてしゃべってる!

 

21世紀を生きるわたしたちにとって、ピカソはほとんど伝説上の生き物です。ピカソが生きていたことの証拠は、その絵画でしか確認できません。

 

もちろん絵画も立派な生きた証です。美術館にいって、生で絵画を見るととてもリアリティがあります。いや、現実なので当たり前ですが。

 

なんというか、その絵画をとおして、画家と対話しているような気分になるのです。

 

カンヴァスのザラザラした表面とか、絵の具を勢いよく塗ったあととか。そいういうものから、画家の生の息づかいが感じられるのです。

 

そして映像です。映像には絵画とはまたちがった魅力がありました。

 

これは本当に貴重な映像だと思います。

 

わたしは、恥ずかしながらピカソが比較的最近の人物だと知ったのも最近です。まだ死後50年も経っていませんから。

それでもまさか動いてしゃべっている映像が残っているなんて思いませんでした。

 

でもよく考えたら、過去の有名な画家で、その映像が残っている人はほとんどいません。

 

Wikipediaによれば、最初の「映像技術」が発明されたのは19世紀末です。映像技術とは、ようは「動画」のことです。いまでは動画サイトがたくさんあって、当たり前すぎるほど当たり前すぎるほどのものになっています。

 

でもじつは動画は、せいぜいここ100年の技術なのです。

 

いまから100年よりも前に死んでしまった画家はたくさんいます。というかその人たちのほうがずっと多いのです。彼らは、その絵画は残っていても本人が動いている映像というものはありません。

そう考えると、やっぱりピカソ本人の映像はかなり貴重です。

 

画家なのだから完成した絵画だけ残れば十分なのかもしれません。でも絵画が好きな人からしたら完成した絵画だけでなく、そのつくっている過程も見たくなるものなのです。

 

ピカソ(の絵)が主役のドキュメンタリー映画

 

ピカソの絵画

© 1956 Gaumont

 

ピカソ本人の映像、といっても画面にうつっているのはほとんど“絵”です。

 

簡単にいってしまえば、絵がずっと映し出されているだけ。ピカソの家に行ったり、街中を歩いたりみたいなことはありません。カメラをカンヴァスの前に固定して、白紙の状態から完成までを映しつづけているのです。

 

ずっとピカソが絵を描いているだけです。だがそこがいい、のです。

 

なぜなら、この映画の視聴者が知りたいのは、「ピカソはどうやって絵を描いているのか」だからです。

 

ピカソは生涯のうちに途方もない数の作品を残しました(具体的な数字は忘れてしまいましたが)。さらに、絵を描くスピードもかなり速かったといいます。

ものすごいスピードでものすごい数の作品を生みだしたのですね。

 

この映画を見ると、その圧倒的なスピードをを自分の目で確認することができます。

 

映画のなかでは、結構映像が早送りにされます。さすがにそのままの速さだと映画の尺に収まらないからです。

 

早送りしながらだと、一枚の絵が完成するまでの時間はものの数分です。

だけれど、「じっさいにはその絵を描きあげるのに数時間をかけた」のだと、映画のなかでピカソがいっていました。

 

そのしゃべっているピカソを見てびっくりしたのですが、絵を描いているときピカソはなんと上半身裸でした。これはピカソについて書かれた、どの本にも載っていない新事実でした。

 

まさか、映画の撮影のためにシャツを脱いだわけではないだろうから、普段からそうだったのだろうと想像しています。どうして脱いでいるのかまではわかりませんが(笑)。

 

結局よくわからない、ピカソ

 

 

「ピカソの絵はよくわからない」といわれます。

何の絵なのかもわからないし、そもそも「完成してるのこれ?」みたいな感じです。

 

こんな風に思っている人は、ピカソの時代にもわりといたのではないでしょうか。だから、絵画を制作しているところを映画で撮ろうということだったのかもしれません。

 

まあ、「過程を見せられても相変わらずよくわからない」というのが正直な感想ですが(笑)。

 

面白いのは、描き始めからいきなり「うわ、ピカソだ!」とはならないことです。

さすがに最初は“ピカソらしさ”はそこまでない。

 

そして、何を描こうとしているのかもほとんどわからない。ん?ということはピカソらしいということなのか……?

 

ともかく、わかるのは人を描こうとしているとか、動物を描こうとしているみたいなざっくりとしたことだけでした。

 

また、描いている途中にもどんどん絵が変わっていきます。最初のほうに描いていたものは、完成したら跡形も残っていなかったりします。

 

はじめからいきなり、あの有名なキュビスムの絵になるわけでもありませんでした。いくらピカソでも最初は「線」を描くところから入ります。まずは人の輪郭からおおざっぱに描く。そこが部屋の中なら窓なども描いていって、絵の中の全体図をザーッと描いていく。そこから色をつけたり、影をつけたりしていく。

 

描いていく過程でその絵がどんどん変化していきます。これで完成かなと思ったら、そこからまた描き足されていくのです。輪郭を描いて、影をつけて色を塗って、はいおわりではありません。

 

たとえば人。最初は輪郭からはいりますが、それも次々変わっていきます。表情もついては消えてをくり返します。

 

先がまったく予想できない。

 

何を描こうとしているのかほとんどわからない。でも当のピカソは筆に迷うところがまったくない。ずっと手を動かしつづけているのです

 

はじめから絵の完成図が頭のなかにあるのか。それとも、ほとんどアドリブみたいに描きながら考えているのか。

 

ひょっとしたら、ピカソの絵画は、そのままピカソの試行錯誤のあとなのかもしれません。

 

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(※本ページの情報は18年9月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。)